2023年、今年はラビットアイの夏剪定をかなり大胆に行いました。

目的は2つ。

1年目の新梢を切り返しして、結果枝を増やし収量アップ。
もう一つは収穫位置を手の届く高さに揃える事。

さて、そこから分かったことがあるのでまとめていきます。

夏剪定は時期によって木の反応が違う

*前提として、今年は3月の初旬にぼかし肥料を撒いてから無施肥です。
実肥もお礼肥もあげていません。あくまで当園での観察の結果です。

上記を踏まえてこの先お読みください。

今年は8月19日から9月24日までラビットアイの夏剪定を行い、観察を続けてきました。

まずはそれぞれの剪定した日で、木の反応がどう違うかを見てください。

切る時期によって発芽する結果枝の反応が大きく変わってきます。

花芽形成の時期もある程度把握できました。

8月19日の夏剪定

8月19日、夏剪定初日に剪定したノビリスはイメージ通り、2~30cm程度の強い結果枝が複数出てきました。それぞれ頂部にたくさん花芽がついています。これが教科書通りの夏剪定の姿ですね!

1本だった枝先が5本に増えています。

9月2日の夏剪定

2週間くらい後、9月2日はメンデイト、ブルーシャワー、ボニータ、アイラの剪定をしましたが、この日に切り返しした新梢からは結果枝が出ているものの、数センチ程度で伸長が止まり、花芽もありません。弱々しく真冬の寒さできっと枯れる羽目になりそうです。

上記のノビリスのように立派な結果枝ができたものもありますが、それはほんの2割程度で、他8割は以下写真のように中途半端な結果になっています。

9月2日周辺を境に、複数の結果枝を求める夏剪定はできなくなっているということが分かります。

9月10日の夏剪定

それからさらに1週間後、こちらはティフブルーですが、この日に切り返した新梢からは分枝がありません。切口直下の葉芽が花芽に変わるという現象が見られました。この日の剪定を境に、以後切口付近から結果枝が発生することはありませんでした。

9月17日の夏剪定

この日はブライトウェルの剪定をしました。記憶が定かではありませんが、この日まで、まだどの枝にも花芽が無かったと思います。木の反応は9月10日と同じです。

9月23日の夏剪定

1週間後、この日は全ての品種に花芽があることを確認しました。いきなり数々の花芽が目に入ってきてびっくりしました。まだ夏剪定全部終わってないのに花芽ついちゃった〜、と焦ったことを覚えています。

それでも気にせず花芽がついている枝も試しにザクザク切りました。

ところが面白いことに、花芽を切り落としてもちゃんと切口付近の葉芽が花芽に変わったんです!これにはびっくりしましたが、すごい発見をした!と喜びましたw

ただ、この花芽の位置を落とすだけの剪定は、花芽の数が通常の10分の1位落ちます。そしてクオリティも心配です。花芽がついたから全ての果実が美味しくなるわけではありませんので。

無剪定のロング結果枝は立派な花芽を10個以上つけていますので、それらを収穫位置に作れたら、最高の株になりそうです。

が現実はそんなに簡単ではなく、、、

夏剪定と「暗期の長さ」の関係

さて、次は「暗期の長さ」によるブルーベリーの生長の違いについて書いていきます。

前置きとしてブルーベリーは短日植物であり、短日植物とは、夏から秋にかけて暗い時間「暗期の長さ」がある一定時間を超えると花芽がつく、とされています。この一定の時間の長さのラインを「限界暗期」と言います。

ネットを見ると一般的に短日植物は13時間が限界暗期とされているようです。つまり1日のうち暗期が13時間以上連続して続くようになると花芽分化が始まる、ということです。

植物は葉で暗期の長さを感じとり、「限界暗期」を迎えると葉からフロリゲンという花ホルモンを頂部に送り花芽を形成します。

これを上記で紹介した、夏剪定による木の反応の違いと照らし合わせて見てみます。

国立天文台のデータを使い、前日の日の入りから日の出までの時間を出します。

まずは8月ですが、剪定が上手くいった8月19日は暗期の長さが10時間35分です。

*黄色の行が剪定した日

そして分枝しなくなった9月がこちらです。

*黄色の行が剪定した日

分枝した結果枝が伸びなかった9月2日の暗期の長さは11時間04分
ちなみにこの期間(8月19日から9月2日)の最高気温は大体33度、最低気温は24度で、気温の違いはありませんでした。大きく変わったのは暗期の長さだけです。

そして切口から全く分枝しなくなった9月10日11時間21分
平日は仕事の為、9月3日から9日まで(グレイ塗り部分)は確認できません出来ませんでしたが、この間のどこかが分枝しなくなるラインということになります。

つまり

暗期の長さが、およそ「11時間〜11時間20分」に達すると夏剪定しても分枝せず収穫量が増えない、ということになります。むしろその数日前にやめないと9月2日の写真のような無駄死にするヒョロっこい枝が出てしまい、花芽がゼロ(もしくは数個)になってしますということになります。

*と言いつつも暗期の長さが枝の伸長に関係しているという情報があったわけでは無いので、あくまで私の観察によるものとご理解ください

そして9月23日、花芽を確認した日の暗期の長さは11時間50分。その前の9月17日は確か花芽は見ていないと思うので、9月18日から22日の間に、当園のラビットアイは限界暗期に到達したと思われます。

つまり(2)

暗期の長さが、およそ「11時間30分〜11時間50分」に達すると一斉に花芽分化が始まる、ということになります。

ちなみに9月の最高気温ですが、それまで33度あたりだったものが、21日から急に30度を下回り28度に下がり20度代が続いています。ですので、恐らく9月21日が花芽分化のスタートラインではないかと推察しています。ここを境にフロリゲンが活性化し、一斉に花芽を作るモードになったと想像します。

つまり(3)

この流れを分かりやすくまとめると、ブルーベリーは花芽を作る20日くらい前に分枝(結果枝を作る)を止める、という事になります。

理想の夏剪定とは

これらを踏まえると、新梢の切り返しによる分枝、収穫量アップを確実にするためには、暗期の長さが11時間に到達する前、10時間35分あたりが理想的だと思います。つまり8月19日のノビリスの剪定がそれになるのですが。これ以降だと、もしかしたら10センチの短い結果枝とかが頻発するかもしれません。

あくまで今年のうちの農園に限った観察ですが、暗期による生長の違いは今後の栽培のヒントになる気がします。(来年もやろうかなw)

ただし冒頭の注釈の通り、肥料を使っている場合はもっと後ろ倒しになると思いますのでご注意を。

ところで…

と色々夏剪定について、実践して観察結果を書いてきましたが、最近植物ホルモンを学んでいると、この新梢の切り返し自体が正しいのかどうか疑問に思える時もあります。

こういう新梢切り返しの夏剪定をするのはブルーベリー農家特有な気がします。
どうなんでしょうか…!?

そもそも先端にホルモンが溜まっているはずなのでこれを切り落としまう行為自体がちょっとどうなんだろうかという気がしないでもありません。

なので、来年は無剪定で着花したブルーベリーと夏剪定で着花したブルーベリーの質の違いを意識して観察して見ようと思います。

一つ何かやるとまた一つ疑問が生まれますw

だから楽しいのかな。

最後までお読み頂きありがとうございました☺️